【部屋に宿泊している人間に閉じこめられてしまった】
businesshotel

私、ちょっと変わった印刷屋をやってまして、 仕事でお札を印刷することがあります。

そのため、よく真新しいお札を持ち歩いていたりするのですが、時々ホテルに泊まった時なんかに、いたずらで絵の裏にこっそり貼ってしまったりすることがあります。
泊まった部屋で絵をひっくり返してみて、 妙に真新しいお札が貼ってあって、怖い思いした人はごめんなさいね。 ほんの出来心です。

これは仕事関係である地方都市の ビジネスホテルに泊まったときの話です 

そこはビジネスとはいえ、観光名所にもなっている地方都市にありがちな、結構グレードの高いホテルでした。
普通のグレードの部屋だったのですが、それでも飾ってある絵なんかもどことなく品のある、落ち着いた感じのところでした。

その日は、ちょっと商談がうまくまとまらずにイライラしていたので、 部屋に帰って来るなり何か悪戯してやれ!という気分で、 いつものように(笑)、額を外してその裏にやたら滅多に結構な枚数のお札をベタベタと貼り付けてしまいました。

その後、一旦食事を取りに外に出て、部屋に戻ってからは一人で酒盛りをして寝たのですが、寝床の中で少し気分が悪くなってきました。
どうも寝付きが悪かったのを不思議とよく 覚えています。
まあ、これは単純に酒のせいなわけですが。

そうこうしながら眠り込んでいたわけですが、 気が付くと暗闇の中、何か非常ベルのようなものが耳元でけたたましく鳴り響いていることが分かりました。
私は最初、それが目覚まし時計かと思って必死に止めようと したのですが、体が重くて全然動かないのです。

悪戦苦闘しているうちにふと目が覚めまして、 今のが夢だったと分かったのですが、何でそんな夢を見たのかすぐに分かりました。
枕元で電話が鳴り響いているのです。

周囲はまだ真っ暗ですし、さすがにギョッとしましたが、 取りあえず出てみようと思って受話器に手をかけた瞬間、 電話は切れてしまいました。
まあ夜中に電話が鳴っていたことは少し怖い気もしましたが。

まだ眠かったですし、 モーニングコールの設定ミスか何かだろうと気にせずまた布団に入り、ウトウトとしてきた頃です。
突然、ピーンポーン!と、来訪者を告げる呼び鈴の音が 部屋に鳴り渡ったのです。

さすがにこれには一度に 眠気が吹き飛ばしました。
私が呆然としていると、すぐさま、ピーンポーン!ピーンポーン!と、 呼び鈴が続けざまに何度も押されました。

ただ、最初は私も唖然としてしまったのですが、すぐに ドアの外で「お客様!お客様!」と呼びかけている声に 気付いたので、少し安心してドアの方に行き「今、開けます」と返事をしたところ、呼び鈴の音は止まり相手はドアの外で待っている様子です。

開けるかどうか、やや躊躇をしたのですが、チェーンをかけて扉を少しだけ開くと、そこには見える範囲だけで ホテルの従業員らしき人が3人ほど立っている様子でした。
私が不審に思い「何でしょうか?」と尋ねると、 彼らは申し訳なさそうに理由も告げずに部屋に入らせて欲しいと言います。

私が理由を尋ねると 「不審な通報を受けたので、念のため確認したい」 とだけ言います。 私は、少々腹立ちましたが、向こうにはどうやら警備員らしき人もいるようなので、一方的に断って不審に思われるのも面倒ですし、とりあえず彼らを中に入れることにしました。

彼らは私の部屋に入って、しばらく浴室等を見回した後、非常に申し訳なさそうに確認完了した旨とお詫びを告げて部屋を去ろうとしたので、私は改めて先ほどの従業員にその理由を尋ねました。

「実は大変不思議なことなんですが、実は30分ほど前にお客様の部屋からフロントに電話がありまして『部屋に宿泊している人間に閉じこめられてしまった』 とだけ言って切れてしまったのです。そこで何度かお部屋に電話したのですが、お客様が出られない ようでしたので、お伺いして頂いた次第です」

私は果たして良いことをしたのでしょうか…